世界史上でも経験したことがない高齢化社会が訪れようとしている日本。社会保障費給付額は年々増加の一途をたどり、財政は大幅な赤字が続き、結果として債務残高がGDPの2倍を超えるなど、主要先進国と比較しても最悪な状態に陥っています。今回は世界の税と会計に対する考え方を探りながら、日本における会計税務の今後を考察していきます。
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世界と比較する日本の財政状況
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近年、ギリシャの混乱が連日のように報じられていましたが、実は日本の債務残高のGDP比率はそのギリシャを超えているのをご存知でしょうか。ギリシャの2015年の債務残高はGDP比率178.4%であり、日本はそれを超える200%超となっているのです。下記の図を見てもわかるように、欧米諸国と比べても日本の債務残高のGDP比率が非常に高いことがわかります。
出典:債務残高の国際比較(財務省)をもとに作成
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債務残高の増加が与える影響
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上記の債務残高は借金を積み重ねてきた結果です。この借金は収入を増やすか、あるいは支出を抑えて黒字化し、将来的に返済していかなければなりません。債務残高については、政府はもちろん、最近では国民も焦り始めており、様々な分野で2020年には財務収支が黒字になるような取り組みをしようとしています。国の収入を増やすためには経済の活性化を目指す必要があり、現在、優秀な企業を取り込もうと国際間での法人税率引下げ合戦が続けられている背景があり、日本が優秀な企業の囲い込みを行うために政府は法人税率の引下げを決定しました。
法人税率の引下げによって経済が活性化し、税収減を超える経済活性があれば、収入を増やすことが可能になるでしょう。ただし逆に負担が増える結果となれば、所得税や消費税などから財源を確保するしか選択肢がなくなってくるのです。
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世界と比べて日本の税金は高くない!?
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所得に占める租税(国税と地方税)と、社会保障(社会保険料)の負担割合を国民負担率と言いますが、2015年における日本の国民負担率は43.4%となっています。これを見ると、「収入の4割超が税金負担になっているのか!?」と不満を言いたくなりますよね。しかし、下記の図を見てください。この税金負担は諸外国と比較すると決して高いとは言い切れないのです。他国に類を見ない速度で高齢化が進行し、社会保障の給付が増大するなかで、日本の国民負担が低いことが国債残高を引き上げている要因のひとつと言えます。言い換えれば、日本は「低負担・高福祉」に向かっていることになり、何らかの対策を早急に行う必要に迫られているのです。
出典:国民負担率の国際比較(財務省)
後編では、北欧諸国を例に「高い国民負担率がもたらすこと」を解説し、企業における会計税務業務について考察していきます。