2014年4月、消費税率が8%にアップし、実際に増税となってから様々な場面で負担を実感した方も多いかと思います。人事・総務部門の実務においては、交通費の変更に伴う給与変更があり、場合によっては昇給と併せ、被保険者報酬月額変更届(※)に該当することがあります。今号では、今後増える負担と活用できる社会保障について説明していきます。
(※)被保険者報酬月額変更届とは、固定的賃金の大幅な変動があった場合、実際の給与等と社会保険料がそぐわない事態となるため、変動があった月から3ヵ月間に支払われた給与額(通勤費を含む)を届け出、保険料を改定するものです。
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まだまだ負担は増える!? 2014年の主な動き
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介護保険
4月から協会けんぽ加入の事業所では、介護保険料率が1.55%→1.72%へ改正されました。
★健康保険料率は据え置きです。健康保険組合に加入する事業所では各組合により対応が違うため確認が必要です。
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復興増税
復興増税のうち、所得税は昨年より上乗せとなっていますが、6月からは住民税が2024年まで年間1,000円増額されました。
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厚生年金
9月分(10月給与控除から)から厚生年金保険料率が改正予定です。
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高校授業料支援金
年収910万円以上の世帯では、4月から高校授業料支援金が廃止となりました(2014年4月入学者から対象)。
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知っておきたい社会保障
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今後の負担について並べるだけでも頭が痛くなる…そんな声が聞こえてきますが、実は役立つ社会保障制度もきちんとあります。
仕事中に怪我をした |
労災保険の適用 |
治療費は原則無料 |
私傷病で会社を休業 |
健康保険、傷病手当金 |
休んだ4日目から給与の約3分の2を給付 |
出産した(本人の場合) |
健康保険、出産手当金 |
産前産後休業中、給与の約3分の2を給付(※) |
出産した(本人、扶養家族) |
健康保険、出産育児一時金 |
1児につき42万円の給付(※) |
介護のため会社を休業 |
雇用保険、介護休業給付金 |
93日を限度に、賃金支給が80%以下となった場合、賃金の40%を給付 |
(※)協会けんぽ加入の場合。健康保険組合では、この他独自の付加給付がつく場合があります。
これらは社会保障制度のほんの一部です。基本的に会社の人事・総務が代行して行う手続きが多いので、不明な点があれば各所に問い合わせをしてみるとよいでしょう。
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負担だけじゃない保障の拡充
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負担増の説明ばかりしてきましたが、一部保障の拡充や制度の創設もあります。
●産前産後休業中の社会保険料免除制度がスタート
今までも育児休業中の社会保険料免除制度はありましたが、産前産後休業中には免除制度がありませんでした。このため、支給は0円であるにもかかわらず、社会保険料は控除され、マイナス支給となり、産前産後休業中の社員には社会保険料を会社に別途振り込んでもらわないといけない状況となっていました。これが4月より産前産後休業中も免除申請(産前産後休業取得者申出書※)を提出すれば、社会保険料が免除されることとなりました。免除申請は産前産後休業中となります。出産前にも届出提出はできますが、予定日と出産日が異なると、変更届が必要となるので、出産後、育児休業開始前までに提出すると手続きが効率的になります。
※健康保険組合では名称が異なる場合があります。
●育児休業給付金が50%→67%に拡充
育児休業中(原則は子供が1歳に達するまで)に賃金支給が80%以下となった場合、雇用保険育児休業給付金が給付されます。多くの会社では休業中は賃金も0円のため、一般的には支給要件に該当するかと思いますが、こちらも4月より、休業開始前の賃金の50%→67%まで引き上げとなりました。なお、育児休業開始から180日目までが67%ですので、181日目以降は今までと同じ50%の支給となります。
★給付の上限額、下限額があります。
●児童手当の上乗せ
消費税増税の負担を軽減するため、2014年度中1回限りですが、「子育て世帯臨時特例給付金」が対象児童1人につき1万円給付されます。申請しないと受給できない可能性が高いので、検討している方は自治体からの情報をチェックしておきましょう。
★こちらの手続きは会社でなく、個人で行います。