特集1:マイナンバー制度・ストレスチェック制度のスタートに向けた業務内容の確認
「マイナンバー制度」と「ストレスチェック制度」 の
概要とポイントのおさらい
●制度及び業務の想定スケジュール
マイナンバー制度
 マイナンバー制度とは、マイナンバー(住民票を持つすべての人に付番される個人固有の番号)を利用して税と社会保障を紐づけし、手続きの簡素化・迅速化を図り、より公平で公正な社会を目指す制度です。民間企業には法人番号が付番されます。
対象企業 すべての企業 ※法人番号は民間企業のみ付番されます。
主な対応業務部署 人事部・総務部
時期 2015年10月〜 通知・付番開始
2016年1月〜 利用開始


 OBCでは、個人番号の取得、保管の際に起こりうるリスクを低減するために、新たにサービスとして「マイナンバー収集・保管サービス」を提供します。OBCのマイナンバー対応システムは法令対応だけでなく、個人番号の取得・保管から利用・提供・廃棄まで、企業のリスクマネジメントと業務生産性まで考慮した対応を同時に実現できます。連動する奉行シリーズとあわせてご利用いただくことをご提案いたします。
ストレスチェック制度
 事業者に対して、ストレスチェック制度(労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師、保健師等による検査の実施)が義務化されます。メンタルヘルスの一次予防を主な目的とする制度であると同時に、労働者のセルフケア、職場環境改善の促進という役割もになっています。
対象企業 50人以上の事業場を有する企業
※従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務とする。
主な対応業務部署 人事部・総務部
時期 2015年12月に施行
※ストレスチェックの実施は原則年1回


 中小・中堅企業が手軽に・継続的に・安心して利用できるストレスチェックサービスです。ストレスチェック法制化に準拠し、ITサービスと運用ノウハウを合わせたスタンダードな運用方法を中小・中堅企業向けに提供します。環境構築の手間が要らないクラウドベースで、社員数に応じた導入しやすい価格帯でリリースを予定しています。
マイナンバー制度の対応

 2016年1月、社会保障・税の分野で個人番号(マイナンバー)と法人番号の利用が開始されます。この「マイナンバー制度」が始まると、人事・総務部門で対応業務が新たに必要となり、様々な負担が増えることが予想されます。
 マイナンバーの付番・通知まで半年を切っていますが、多くの企業は「まだ情報を収集している段階」という状況です。とは言っても、そろそろ具体的な準備を始めなければならない時期に入ってきているのも実情です。マイナンバー制度の業務プロセスを見ながら対応業務と、それに伴う注意点を確認していきましょう。

@取得
マイナンバーの対応業務は、取得から始まります。正社員だけでなく、準社員、パート・アルバイトといった非正社員からもマイナンバーを収集します。また、扶養家族や報酬を支払う有識者・外部スタッフからの取得も必要となります。
◎懸念事項…マイナンバーが集まらない、マイナンバーの取得・確認漏れ、資料管理等の手間、個人番号漏えいリスク など
A保管
マイナンバーを取得した後は保管作業が発生します。保管に際しては、マイナンバーの漏えいや不正利用に対するリスク管理、運用監視の体制を強化する必要があります。
◎懸念事項…保管に伴う番号の漏えいリスク、法令に則った保管が必要 など
B利用・提供・破棄
実際にマイナンバーを実務に使用する場合は、法令順守は絶対です。マイナンバーは特定個人情報にあたり、定められた利用の範囲を超えて使用してはならない決まりがあり、守れなかった場合は罰則もあります。不要になったマイナンバーも漏れなく破棄しなければなりません。
◎懸念事項…利用範囲の制限、必要な書類への記載漏れ、廃棄漏れ など
C安全管理
マイナンバーの漏えい、減失、毀損の防止など、適切な管理のために安全管理措置を講じる必要があります。

 このようにマイナンバー制度の対応業務は、「番号を必要書類に記入するだけ」ではなく、「マイナンバーが特定個人情報であることを認識してしっかりと法令を守ること」、「業務プロセスを意識してミスや無駄が発生しないようにすること」が大切になってきます。OBCでは、マイナンバー制度に伴うリスクを低減し、業務を安全かつ正確・効率的に行えるように、奉行シリーズとサービスを提供いたします。


 マイナンバーの対応業務について「従業員から番号を教えてもらって、該当する書類に記入するだけじゃないの?」と考えていませんか。しかし、必要な番号を収集して照合するには膨大な労力と時間がかかり、さらにマイナンバーを取り扱うには、様々な決まりごとを守らなければなりません。対応業務は、下記の3つをクリアすることが求められます。

すべての企業に提供するOBCマイナンバー対応モデル
 OBCは、個人番号の取得、保管の際に起こりうるリスクを低減するために、新たなサービスとして「OMSS+マイナンバー収集・保管サービス」を提供します。OBCのマイナンバー対応システムは法令対応だけでなく、個人番号の取得・保管から利用・提供・廃棄まで、企業のリスクマネジメントと業務生産性まで考慮した対応を同時に実現できます。


ストレスチェック制度の対応

 2015年12月に施行が予定されているストレスチェック制度の実施開始を前に、知っておきたい制度の流れとポイントについて、企業のメンタルヘルス対策や職場改善の支援に携わる公益財団法人労働科学研究所特別研究員(職場ドック支援チーム)の吉川悦子氏にお聞きしました。ストレスチェック制度の目的や性質を理解すると同時に、実施の仕組み作りのヒントを探ります。
●ストレスチェック制度の流れ図
仕組みのポイント
@法令順守は絶対 A労働者の権利を守る B複雑でないシンプルな仕組み
C情報管理をしっかり行う D実施者・医師等を見極める E信頼関係が重要
●今後の取り組みの流れ
 事業者が実施の表明をした後、衛生委員会にて今後の取り組みについて検討会を開き、そこで決まった方針のもと、実施に向けた準備を行います。今年の12月に実施する場合は8月までに実施準備を始めたいところです。従業員に対しては「決まったことなので受診をお願いします」と事後報告するのではなく、趣旨や目的をしっかり理解させ、一丸となって取り組みましょう。繁忙期にストレスチェックを実施すると、ストレスが高いと感じる社員が多くなる可能性もありますので、できれば繁忙期は避けるのが良いでしょう。実施は年1回とされていますが、労使が合意すればそれ以上の回数も実施可能です。

2002年東海大学大学院健康科学研究科看護学専攻修了。同年、NTT東日本首都圏健康管理センタ保健師、06年より公益財団法人労働科学研究所研究員として勤務。四日市看護医療大学看護学部助教(07年)を経て、11年からは東京有明医療大学看護学部の講師を務める。著書に『すぐに役立つ産業看護アセスメントツール』(共著)、『産業・精神看護のための働く人のメンタルヘルス不調の予防と早期支援』(共著)などがある。
職場ドック支援チーム
公益財団法人労働科学研究所に設置されたメンタルヘルス一次予防のための参加型職場環境改善を支援するプロジェクトチーム。医師・保健師・人間工学専門家・臨床心理士・作業環境測定士などの学際的なメンバーから構成され、事業場での職場ドック実施に関する技術的サポート、メンタルヘルス一次予防における職場環境改善に関わるコンテンツの提供ならびに研修・啓発事業を行っている。
メンタルヘルス対策の取り組み状況
 2013年に実施された厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策を実施している企業は約6割にとどまっています。メンタルヘルス対策の重要性や必要性が高まっている一方で、約4割の企業が、「必要性を感じないから」「該当する従業員がいないから」などの理由でメンタルヘルス対策に取り組んでいないと回答しています。このことから、一部の企業ではメンタルヘルス対策を「病気の発見や治療につなげることを目的としている」と捉えていることがわかります。
ストレスチェック法制化の目的
 今回義務化されるストレスチェック制度は、病気の早期発見や病気の人をつまみ出す目的で実施されるのではなく、「メンタルヘルスの一次予防」、つまり労働者のセルフケアや職場環境改善を促す制度として位置づけられている点を忘れてはいけません。職場にいる全員に情報提供や教育研修を行い、職場のメンタルヘルスの取り組みを一歩前に進める絶好の機会であると考えると良いでしょう。定期健診が体の健診であるのに対し、ストレスチェック制度は「心の健康診断」と捉えるとわかりやすいかもしれません。
ストレスチェック実施前の準備
 企業がストレスチェックを実施するうえで注意すべきことがあります。それは、「ストレスチェックの結果を本人の同意なしに開示・閲覧してはいけないこと、その結果が本人の評価や雇用に影響してはいけないこと」です。ストレスチェック制度は非常に機微な情報を取り扱うため、いかに労働者の権利を守るかという議論のもと、成立するまでに実に4年以上の歳月がかけられた制度です。そのために実施開始前には必ず「事業者による実施の表明」を行い、@実施目的、A実施内容、B実施に際しての約束(権利や情報保護等)、Cフォロー体制などを明確にします。
ストレスチェック運用時のポイント
 制度の流れと、労働者、事業者、実施者、医師等の4者の関わりが複雑で、実施の定着までには試行錯誤があるかもしれません。就業規則の変更が必要な場合は、社労士の協力も必須です。実施者・医師等を選ぶ際は、「企業のことを第一に考えてくれるかどうか・職場をより良くするためのサポートをしてくれるかどうか」を見極めましょう。
中小・中堅企業に求められる体制
 ストレスチェック制度は法令順守が絶対となりますが、法令は複雑で理解しにくい場合があり、変更や改正も随時行われます。ストレスチェックは1回で終わるのではなく、その後の予防対策も含めて今後ずっと続けていかなければなりませんので、シンプルでわかりやすく、実施に無理をしないことが継続のポイントです。資金や人員の確保に余裕がある企業であれば、自力でストレスチェック制度の仕組みを構築できるかもしれませんが、中小企業では資源が限られた中で運営せざるを得ないかもしれません。
パッケージ化されたサービスの活用
 そこで活用したいのが、「パッケージ化された外部の委託サービス」です。外部のEAP(従業員支援プログラム)など、ある程度専門家にお任せすることも検討して良いと思います。パソコンや携帯電話、スマートフォンやタブレット端末などのICT(情報通信技術)でストレスチェックを実施できる体制を支援するサービスも多くあり、気軽に受けることができるという点では受診率アップにつながるかもしれません。今回は労働者が50人未満の事業場は努力義務となりましたが、全ての事業場への義務化を見越した検討もすでに始まっています。労働者が元気な心身でいきいきと働ける職場を企業自身が作り上げていくことが大切です。
吉川先生からのメッセージ
法律を守ることは大前提ですが、自分たちが実施・継続しやすい仕組みを作ることも重要です。そして、実施するごとに安全と健康のレベルが上がるようなスパイラルアップできる体制をぜひ作っていってください。中小企業では、自分たちが気づかないうちにメンタルヘルス(心の健康づくり)に役立つたくさんの工夫をすでに実施しています。それを出発点に、自社の強みをいかしながら、自分たちの職場をより良く働きやすくするために、ストレスチェック制度を大いに活用してほしいと思います。
●奉行EXPRESS 2015年春号より [→目次へ戻る]