健康でいこう!
頭皮をきちんとケアして清潔感のある印象に頭皮湿疹の予防はまず生活習慣の乱れ改善から
ビジネスパーソンのマナーの一つである清潔感。汗やからだのにおいが気になる季節は、特に気をつけなければなりませんよね。髪の毛のまわりも同じで、毛穴が詰まりやすくなる夏場は、頭皮の赤みや、フケが多くなってしまう原因にもなる「頭皮湿疹」に注意が必要です。 医学博士
皮膚科専門医/住吉皮膚科院長/順天堂大学皮膚科准教授(非常勤)
住吉 孝二(Kouji Sumiyoshi)さん
1971年生まれ。98年に順天堂大学医学部卒業、2004年同大学大学院博士課程修了し、同年日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。現在は順天堂大学皮膚科准教授として、また11年に開院した住吉皮膚科の院長として日々診察に当たっている。新聞や雑誌への寄稿も多い。
気がつきにくく認識しづらい頭皮湿疹
顔やからだの皮膚と同じくケアが必要
 最近、一般用医薬品(市販薬)の中に「頭皮湿疹向け」と書かれた製品を見かけるようになりました。「頭皮湿疹」という名称がついていますが、これは頭皮にできる特別な湿疹というわけではなく、湿疹が頭皮にできたため、そのように呼ばれています。
 湿疹の原因は様々ありますが、私たちの身近な疾患として挙げられるのが、脂漏(しろう)性皮膚炎です。脂漏性皮膚炎とは、頭、おでこ、鼻、胸、背中、脇など、皮脂の分泌が盛んな部分(脂漏部位)に生じる皮膚炎のこと。何らかの原因で皮脂が過剰に分泌され、皮脂によって毛穴が詰まり、老廃物がたまる、あるいは常在菌が刺激物となるなどして、炎症が起きます。頭皮にできる湿疹はこの脂漏性皮膚炎の場合が多いのです。
 頭皮湿疹を患うと、かゆみ、赤みはもちろん、フケが多くなったり、頭皮のにおいがきつくなったりします。スーツやジャケットは黒っぽい色が多いので、肩に多量のフケが落ちるのは見た目にもよくありませんし、ただでさえ体臭が気になる季節にさらに不快なにおいの発生は、清潔感が失われる大きな原因にもなります。特に新陳代謝が高まる夏は、皮脂の分泌が盛んになるばかりでなく、汗や日焼けなどによる皮膚への刺激も増します。また、冷房のきいたオフィスは肌が乾燥しやすいので、脂漏性皮膚炎と併せて乾燥性皮膚炎にも気をつけなければなりません。
 頭皮は髪の毛に覆われており、後頭部も鏡を使わないと見えないため、発疹を認識しづらく、理髪店や美容院に行ってはじめて頭皮湿疹に気づく人もいます。鏡で毎日顔をチェックする人はいても、同じように頭皮を隅々までチェックする人は少ないと思います。
 顔やからだの皮膚だけでなく、頭皮のスキンケアも積極的に行うことが大切です。
予防は生活習慣の乱れを改善することから
頭皮のチェックを習慣にする
 頭皮湿疹を含め、皮膚の炎症を抑えるには、抗炎症薬の使用や、日頃から保湿クリームを塗るなど、外からのケアを思い浮かべます。これらも大切なスキンケア方法ですが、からだの内側から皮膚の状態を整えることが、実は一番の予防でもあります。体質や生活環境の影響もありますが、次のチェック項目に当てはまる人は、肌の状態に注意しましょう。

●日常生活を見直してみましょう ※脂漏性皮膚炎の場合
ホルモンバランスの乱れ
日常的に過労・ストレスを感じている
日頃から寝不足
就寝時間が不規則
食生活の乱れ
脂っこい料理や肉中心の料理が多い
野菜不足・栄養バランスが偏っている
アルコールや辛いものの摂取が多い
ビタミンB群(特にビタミンB2・B6)の不足
※ビタミンB群:トマト、ほうれん草、キャベツ、椎茸、しじみ、レバー、卵、牛乳など
身体的な特長
頭や顔がテカって脂っぽい
ニキビができやすい

 ここで、フケについても触れておきましょう。フケの正体は「古くなった細胞」。いわば、頭皮の垢です。フケが出る原因に、誰でも持っている癜風(でんぷう)菌という常在菌のカビ(真菌)が関係しています。この菌は女性より、皮脂分泌の多い男性、特に30代男性の保有率が高いようです。フケが多い人は、洗髪し過ぎにも気をつけて、フケ用シャンプー・リンスを選ぶようにしましょう。ただし自己判断は禁物。まずは、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。住吉皮膚科では、頭皮湿疹をはじめ、様々な皮膚トラブルへの診療、アドバイスを行っています。今年の夏から頭皮のチェックを習慣化してみてくださいね。
●奉行EXPRESS 2012年夏号より [→目次へ戻る]