健康でいこう!
心とからだに作用する笑いを健康づくりに活用感情と表情を鍛えて“笑い上手”を目指そう
「笑い」と聞いて何を思い浮かべますか。私たちにとってはエンターテイメントの笑いが身近ですが、最近では、笑いがからだに与える影響を医学的、心理学的な面からアプローチした研究も進められ、病気の予防に笑いを採り入れる行政や企業が増えています。笑いが与える効果とは? 日本笑い学会関東支部
佐野百合子/高杉和徳/川上千里
1994年に大阪で発足した日本笑い学会の支部として、95年2月に設立。笑いを総合的に捉え、芸術、文化、健康、医療、町おこしなど、様々な分野との関わりについて研究を行うとともに、学校や病院、行政からの講演依頼も積極的に受けている。現在、関東支部には学生から定年者まで約200名が在籍し、一般の方から医師、弁護士、教授などの有識者まで幅広い会員で構成されている。
笑いと言っても種類は様々
心と体に作用する笑いの力
 「笑う」という行為は、一部の霊長類に見られるものの、人間特有の習慣と言えます。笑う場面も様々です。漫才や落語を聞いて笑ったり、好印象を持ってもらおうと愛想笑いをしてみたり、笑うことでコミュニケーションをとったり、人の失敗を鼻で笑ったり、窮地に追い込まれどうすることもできず笑うしかなったり。ビジネスパーソンの方も意識的に無意識に、日常で「笑い」を使い分けていることでしょう。
また、笑いにもいろいろな種類があります。広義的に捉えればユーモア、狭義的にはジョークやギャグもその一種です。
 では、そもそも何のために人は笑うのでしょうか。その明確な答えは、実ははっきりしていません。医学的、心理学的、哲学的など学者によっても意見が分かれます。それだけ笑いは奥が深いという証拠なのかもしれません。その中で、今回は笑う理由を大きく二つに分けてみました。

「不随意」の笑い(意識せず自然と笑うこと 生理的に笑うこと)
体温調節のために汗をかくように、からだの状況に応じて笑うことを指します。緊張を和らげリラックス効果を与えたり、警戒心を解いて生命を守ったり、意識せずに自然と笑顔を作り出します。赤ちゃんが周りの気を引いて守ってもらうために笑う新生児微笑や、顔の神経や筋肉を鍛えるための笑いも「不随意の笑い」に当たります。

「随意」の笑い(意図的に笑うこと 外部的要因によって笑うこと)
面白い話を聞いて笑ったり、コミュニケーションを円滑に進めるために笑ったりすることを指します。ビジネスパーソンの方は、随意の笑いが多いと思います。例えば、機嫌を取るために上司のジョークに笑ったり、お客様に商品を勧める時ににこやかに笑ったり、商談の際に笑顔で相手をほめたり。笑う行為は、ビジネスの「手段」としても力を発揮します。

 場をわきまえず笑ったり、ヘラヘラしたりすることは好ましくありませんが、やはり笑顔のある場所は、ない場所と空気感が違います。職場でもユーモアのある魅力的な人がいるといないとでは雰囲気が違うことを感じるはずです。
幾多の場面で活用される笑いの効果
豊かな感情が作る笑いを上手に活用
 笑いにはたくさんの効果があります。仏教には「和顔施(わがんせ)」という教えがあり、和やかな顔つきやにこやかな表情には、人を幸せにする力、心を和ませる効果があるといわれます。
 日本でも知られるようになったラフターヨガは、笑う時に発する呼吸を採り入れた健康法です。酸素を多く取り込むことで血のめぐりや心肺機能を鍛え、大声を出すことでストレスを発散させる効果があるといわれます。一方、医学の分野では、笑いを病気の予防や治療に活用するための免疫やホルモンの研究があり、病気のこどもの心を癒すクリニクラウンなども行われています。事実、われわれ会員たちが年齢を重ねても肌つやが良いのは、笑いが気持ちを晴れやかにし、細胞が活性化している証かもしれません。
 しかし最近は、笑いたいのに笑えない、仮面をつけたみたいな不自然な笑いになるなど、感情を上手く吐き出せな人も多いと聞きます。そこで、オフィスでできる感情を豊かにするトレーニングを紹介しましょう。

名前を呼びながら挨拶や会話をする
「○○さんおはよう」「○○さん、お願いできますか」などと声をかけます。
鏡の前で笑顔の練習
朝、顔を洗う時など笑顔を作ります。その時に自分の名前をつけて「今日も頑張るぞ」「いい顔だね」「笑顔が素敵」と恥ずかしがらず言ってみましょう。
オフィスの化粧室やロッカールームで表情チェック
鏡のある場所に立ったら笑顔を心がけます。そうすることで笑顔が習慣化します。
笑み筋を鍛える
頬や口角などの筋肉をほぐし、表情を作るための筋肉を鍛えます。

 日本笑い学会関東支部では、月1回のペースで研究会やイベントを開催しています。ビジネスに役立つ情報もあるので、ぜひ足を運んでみてください。笑いを健康法としてだけではなく、自分自身を高める手段として使い、魅力的なビジネスパーソンを目指してくださいね。
●奉行EXPRESS 2012年春号より [→目次へ戻る]