
「眠り」は私たちの生活に欠かせない身近なものですが、実のところ「何のために眠るのか」という眠りの役割はまだ十分に解明されていません。ですが、睡眠の役割の中心は、ストレスを受けた脳の細胞を休め、再び情報処理能力を回復して次の覚醒に備えることであると信じられています。また、覚醒中に新規に形成されるシナプス(神経の情報伝達を担うもの)には量的限界があるといわれており、脳に新しい情報を蓄える(記憶する)ためには、不要な情報を捨てて新しい情報のためのスペースを確保する必要があるため眠りが起こるという仮説もあります。端的に言えば、脳を有効に使うためには睡眠が不可欠というわけです。睡眠はほかにも、エネルギーの調節、適切な免疫力の発揮、自律神経の調整など生命を維持するための役割を担っています。
では、昼間の眠気はなぜ起こるのでしょうか。眠気は生活習慣や環境条件、身体の調子によっても影響され、さまざまな原因が関わります。代表例を挙げてみましょう。
生理的な眠気の出現 |
午後1〜4時は午睡ゾーンと呼ばれ、この時間帯には身体のリズムに伴う生理的に眠気が現れます。 |
慢性的な睡眠不足 |
夜の睡眠が不足すると、それを補おうと昼間に眠気が起こります。十分量(8時間程度)の睡眠を確保しているのに眠くなる人は、眠りの質が悪い可能性があります。 |
食後の眠気 |
食後は血糖値が上昇し満腹中枢が働くと、眠気が引き起こされます。餌にありついた動物が、そのあと活動量を減らしてエネルギーの浪費を避ける目的によく合っています。 |
季節的な影響 |
日照時間の変化により、夏と冬では自発的な夜の睡眠時間が変わります。夏は夜間睡眠が短縮し、その分昼間に身体を休めようとします。逆に冬は夜の睡眠が長くなります。 |
眠気は脳の処理能力が低下している合図。ほうって置くと作業効率の低下を招きます。ビジネスパーソンは忙しさのあまり休息を犠牲にする傾向にありますが、無理をして徹夜で作業するより、睡眠時間を確保して脳のパフォーマンスを高めることが重要です。
昼間の眠気も同様で、眠いと感じたら眠るのが一番です。昼休みを自由に使えるのであれば、会議室やデスクで仮眠をとりましょう。この時の注意点はあまり長く寝すぎないこと。10〜20分がベストです。しかし、いくら昼休みだからと言っても白昼堂々昼寝をするのははばかれますよね。そこで、簡単にできる昼間の眠気対処法を紹介しましょう。
日光浴をする |
日光には覚醒を促す作用があります。屋上や窓際に行って日光浴をしましょう。朝日を浴びると体内時計がリセットされるので、1駅前で降りて歩くのも効果的です。 |
目を閉じる |
目を閉じるだけでも睡眠と同様の効果を得られます。ただし考え事は一切しないこと。アイマスク等で光をさえぎると効果的です。 |
質のよい睡眠を心がける |
頭に上った血を冷やし、寝る前に自分が一番リラックスできる状態を作ります。例えばぬるめの湯船に浸かる入浴は、副交感神経を優位にするので眠りの準備に適しています。夜中に照明が明るいコンビニに行く、カフェインやニコチンを含む嗜好品をとる、寝酒をするなど、深い睡眠を妨げる行為は避けましょう。 |
これらの対処法を心がけても改善されない場合は、不眠症や過眠症などの睡眠障害も疑われるので専門機関での診断をお勧めします。
日本睡眠学会のHPでは、睡眠医療認定機関を紹介しているので活用してみてください。常に最大の能力を発揮できるよう、自分の体調をコントロールしながら業務に取り組めば、仕事の評価も一段と上がるはずです。