私たちの生活は総じてGDP(国内総生産)で表され、GDPの高い国=豊かな国・幸福な国という考えが先行しがちです。しかしGDPは、離婚、事故、自殺、環境破壊などネガティブな要素であっても、そこに金銭が生み出されれば加算されます。一方で、人々の福祉に必要な家庭内の家事・育児・介護などは加算されません。そう考えると、果たしてGDPが高い国が豊かな国・幸福な国なのでしょうか。本書はそんな疑問から始まります。
インドと中国という大国にはさまれたブータンは、人口約67万人と小国で、決して金銭的に豊かとは言えませんが、なんと国民のおよそ97%が「幸福」と答える“幸福立国”。幸福立国と呼ばれるゆえんは、GNH(Gross National Happiness、国民総幸福)を目指すことを君主みずから決意し、国是として憲法に盛り込み、政治・行政の中で実践している国だからです。
本書は、仏教を背景とする国民の考え方や、周辺国の近代化から学んだ国政などの観点から、GNHが誕生した経緯と実践を取り上げ、その重要性を解説しています。ブータンのGNHから、経済活動の本質を考えさせられる一冊です。
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