健康でいこう!
ただ何気なく飲むだけではもったいない
水のとり方を意識すれば、からだはもっと健康になる!
「水はからだにとって不可欠なもの」とわかっていても、“水のとり方”に気を使っている人は少ないはず。でも、賢い水分補給方法を知っていれば、からだはもっと元気に、もっと丈夫に、もっと健康になるのです。これから迎える夏本番にも備えたい、水のとり方のポイントを押さえておきましょう。 医学博士
東京大学政策ビジョン研究センター教授 理事(副学長)
「健康のため水を飲もう推進委員会」(厚生労働省支援)委員長
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~muto/
武藤 芳照(Yoshiteru Muto)さん
1950年愛知県生まれ。75年名古屋大学医学部卒業後、東京厚生年金病院整形外科医長を経て、81年より東京大学教育学部助教授、同大学院の教授を歴任。2011年4月から現職。厚生労働省が支援する「健康のため水を飲もう推進委員会」委員長を務める。主な著書に『健康のため水を飲もう』(水道産業新聞社)などがある。
からだの水分不足は生命にかかわる危機を招く
実は水分不足になりやすいビジネスパーソン
ペットボトル  約60%が水分でできているヒトのからだは、体重の1〜2%の水分が減っただけで「渇き」という黄信号が点灯、その数値が6%を超えると吐き気や頭痛、幻覚や錯乱を引き起こし、20%に達すれば死に至ります。脱水が関係する症状の例として、体温調節機能の低下や血中の塩分濃度の減少などで起こる熱中症、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、心筋梗塞、血栓に起因するエコノミークラス症候群などが挙げられます。また、体内の水分量が少なくなると、老廃物の排泄や発汗といった自律神経の低下やスムーズな代謝が行われにくくなるため、便秘やむくみ、冷えや肌荒れ、最悪の場合は全身の機能に障害が出て死を招く恐れもあります。
 生命維持に不可欠な水分ですが、「からだのためにどんどん水分を飲めばいい」というわけではありません。一度に大量の水をがぶ飲みしたり、利尿作用のある飲み物、清涼飲料水や機能性飲料ばかり飲んだりすることは、からだにとって負担になりかねませんし、お金もかかります。健康のためには「水のとり方」にも気をつける必要があるのです。
 からだの脱水症状は、子どもや高齢者に多く見られますが、働き盛りのビジネスパーソンも例外ではありません。宴席ではビールを、商談先ではコーヒーを飲んだとします。アルコールもカフェインも利尿作用がある飲み物なので、尿として水分が体外に出されることを知っておく必要があります。最近はマラソンやジムで汗を流す人が多いですね。運動量によりますが、ヒトは1時間で約3リットルの汗をかき、1日10リットル以上発汗することもあります。今夏は節電の影響で、通勤やオフィス内でも汗をかく機会も増えるでしょう。実は、現代のビジネスパーソンは、日常的に水分不足ともいえるのです。
水をこまめに飲むことで心身を正常に保つ
ライフスタイルに合った水分補給を心がける
 水分補給のポイントは、渇きを感じる前に水分を取ること。日常生活であれば、ただの水(水道水)で構いません。ビジネスパーソンの行動パターンを想定しながら、水を飲むタイミングをつかんでおきましょう。
起床時 寝ている間にも、ヒトは大量の汗をかいているため、起き抜けのからだはカラカラです。睡眠中の脱水を改善するためにも、起きたらまずコップ1杯の水を飲みましょう。
会社到着時 朝、オフィスに着いて一息ついたらコップ1杯の飲水が理想です。頭を仕事モードに切り替える準備体操にもなりますね。水を飲む時間のためにも、余裕をもった出勤をお勧めします。
休憩時 カフェインには利尿作用があるので、コーヒーを飲んだらコップ1杯の水を。訪問先でコーヒーを出されることが多い場合は、外出時にペットボトルや水筒を持ち歩くと便利です。
飲酒前・中・後 ビールを10杯のめば、11本分の尿が出るといわれるように、アルコールにも利尿作用があります。飲酒する50〜60分前に水をコップ1杯飲みましょう。ビールを飲んでいる間はチェイサーとして水を飲むようにし、飲酒後も水を多めに。アルコールと同時に水を飲むことで、二日酔い防止にもなります。ビアガーデンの季節には特に注意が必要です。
入浴前後 入浴時は想像以上に発汗していて、40度の湯船に10分間浸かると500mlの水分が失われるといわれます。入浴前か後に水を飲むよう心がけましょう。
就寝前 睡眠中も呼吸や発汗で水分を排出しています。寝る前にコップ1杯の水を飲み、和風旅館のサービスのように枕元にも水を用意しておくとよいでしょう。夜中にトイレに起きたら都度、飲水してくださいね。
※コップ1杯=180ml程度

 水のとり方を工夫するだけで重大事故の予防になり、健康に近づけるなんて、何だかお得だと思いませんか。しかも、高価な水を購入する必要はなく、水道水で十分です。冷たい水は心身をリフレッシュさせる効果があるので、ペットボトルに水道水を入れて、1日冷やしておくのもよいでしょう。会社をあげて、「健康のため水を飲もう推進運動」を実践してみてください。そして、今日からぜひ、明日の健康のために「あと2杯」を心がけてほしいと思います。「自ら健康に 水から健康に!」。
●奉行EXPRESS 2011年夏号より [→目次へ戻る]