
約60%が水分でできているヒトのからだは、体重の1〜2%の水分が減っただけで「渇き」という黄信号が点灯、その数値が6%を超えると吐き気や頭痛、幻覚や錯乱を引き起こし、20%に達すれば死に至ります。脱水が関係する症状の例として、体温調節機能の低下や血中の塩分濃度の減少などで起こる熱中症、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、心筋梗塞、血栓に起因するエコノミークラス症候群などが挙げられます。また、体内の水分量が少なくなると、老廃物の排泄や発汗といった自律神経の低下やスムーズな代謝が行われにくくなるため、便秘やむくみ、冷えや肌荒れ、最悪の場合は全身の機能に障害が出て死を招く恐れもあります。
生命維持に不可欠な水分ですが、「からだのためにどんどん水分を飲めばいい」というわけではありません。一度に大量の水をがぶ飲みしたり、利尿作用のある飲み物、清涼飲料水や機能性飲料ばかり飲んだりすることは、からだにとって負担になりかねませんし、お金もかかります。健康のためには「水のとり方」にも気をつける必要があるのです。
からだの脱水症状は、子どもや高齢者に多く見られますが、働き盛りのビジネスパーソンも例外ではありません。宴席ではビールを、商談先ではコーヒーを飲んだとします。アルコールもカフェインも利尿作用がある飲み物なので、尿として水分が体外に出されることを知っておく必要があります。最近はマラソンやジムで汗を流す人が多いですね。運動量によりますが、ヒトは1時間で約3リットルの汗をかき、1日10リットル以上発汗することもあります。今夏は節電の影響で、通勤やオフィス内でも汗をかく機会も増えるでしょう。実は、現代のビジネスパーソンは、日常的に水分不足ともいえるのです。
水分補給のポイントは、渇きを感じる前に水分を取ること。日常生活であれば、ただの水(水道水)で構いません。ビジネスパーソンの行動パターンを想定しながら、水を飲むタイミングをつかんでおきましょう。
起床時 |
寝ている間にも、ヒトは大量の汗をかいているため、起き抜けのからだはカラカラです。睡眠中の脱水を改善するためにも、起きたらまずコップ1杯の水を飲みましょう。 |
会社到着時 |
朝、オフィスに着いて一息ついたらコップ1杯の飲水が理想です。頭を仕事モードに切り替える準備体操にもなりますね。水を飲む時間のためにも、余裕をもった出勤をお勧めします。 |
休憩時 |
カフェインには利尿作用があるので、コーヒーを飲んだらコップ1杯の水を。訪問先でコーヒーを出されることが多い場合は、外出時にペットボトルや水筒を持ち歩くと便利です。 |
飲酒前・中・後 |
ビールを10杯のめば、11本分の尿が出るといわれるように、アルコールにも利尿作用があります。飲酒する50〜60分前に水をコップ1杯飲みましょう。ビールを飲んでいる間はチェイサーとして水を飲むようにし、飲酒後も水を多めに。アルコールと同時に水を飲むことで、二日酔い防止にもなります。ビアガーデンの季節には特に注意が必要です。 |
入浴前後 |
入浴時は想像以上に発汗していて、40度の湯船に10分間浸かると500mlの水分が失われるといわれます。入浴前か後に水を飲むよう心がけましょう。 |
就寝前 |
睡眠中も呼吸や発汗で水分を排出しています。寝る前にコップ1杯の水を飲み、和風旅館のサービスのように枕元にも水を用意しておくとよいでしょう。夜中にトイレに起きたら都度、飲水してくださいね。 |
※コップ1杯=180ml程度
水のとり方を工夫するだけで重大事故の予防になり、健康に近づけるなんて、何だかお得だと思いませんか。しかも、高価な水を購入する必要はなく、水道水で十分です。冷たい水は心身をリフレッシュさせる効果があるので、ペットボトルに水道水を入れて、1日冷やしておくのもよいでしょう。会社をあげて、「健康のため水を飲もう推進運動」を実践してみてください。そして、今日からぜひ、明日の健康のために「あと2杯」を心がけてほしいと思います。「自ら健康に 水から健康に!」。