
著者:真藤順丈
メディアファクトリー
1,260(税込) |
読み始めは、地図に書かれた場所にまつわる物語が展開されており、後のページもこのような物語が紹介されるのかと思いきや、実は、物語が記載された地図帖を持つ「地図男」と地図男に魅了される「俺」の物語でもあるのです。
「地図男」とは一体何者か。軌道の矢印が書き込みと付箋で埋め尽くされ、所々に物語の断片が書かれた紙切れが挟まった地図帖の持ち主。行動範囲は関東エリアで神出鬼没。沈思黙考型でありながら、会話を嫌うわけでもない性格。そんな地図男に「俺」は神奈川県茅ヶ崎市の国道138号線で初めて出会います。
ある日、地図をなくした俺は、地図帖を小脇に抱えた男に道を尋ねます。大体の場所を言うと、男はすぐに的確な場所を諳(そら)んじ始めるのです。さらに、開かれた地図帖を見て驚いた俺は、紙面に書かれた物語に興味を惹かれていきます。
その後、地図男に遭遇することがちょっとした楽しみになっていた俺は、会うたびに地図に書かれた物語を読ませてもらうようになります。そして、俺は次第に、地図男自身と物語の背景に隠された謎を突き止めようと地図男を探し始めるのです。
地図に書かれた物語と、地図男と俺の物語が交互に語られる本書。そして実は、その物語と地図男を結ぶものがある謎。読み進めるうちに、自分自身もいつかどこかで地図男に会いに出かけたくなるような、楽しみをくれる一冊です。
|