健康でいこう!
疲労回復、血行促進、消化吸収 いいことづくめの酢を美味しく
バナナ酢、みかん酢、りんご酢。
フランスにはシャンパン酢も!
お酢のバラエティが豊かになった今、健康増進のためにもどんどんお酢を食生活に取り入れたいものです。しかし、どんな酢をどんな風に摂れば本当に効果的なのでしょうか。
栄養士で料理家の小池けいこ先生に美味しくて賢いお酢の摂り方と、うれしい栄養効果をうかがいました。
小池けいこさん 料理家・栄養士
小池けいこ(Keiko Koike)さん
株式会社花王勤務時に栄養士の資格を取得し、特定栄養保健食品の開発、販促などに携わる。その後、フリーの料理家、栄養士として女性誌の料理ページで活躍中。昨年出産、日夜安心の離乳食メニューを考える一児の母でもある。
TEL03-3971-4922
料理には穀物酢。飲むなら果実酢をビタミンCと一緒に
 酢が調味料としてだけではなく、ヘルシーな食材であるということがすっかり一般的に知られるようになりました。しかし、どの酢をどのように摂ればいいのかということについては、種類があり過ぎてわからないという方も多いように見受けられます。
 まず酢の種類を把握しておきましょう。市販されている醸造酢は大きく穀物酢と果実酢に分けられます。穀物酢とは、酢1リットルの中に穀物が40グラム以上含まれているものを指します。果実酢とは、その果実の果汁が1リットルに対し300グラム以上使われているものを指します。主成分はどちらも酢酸ですが、その中でもまた材料の違いで風味、酸味の違いがあります。それぞれの特長を生かして使いましょう。
 目安としては料理なら穀物酢、ドリンクを作るなら果実酢のほうが風味がよいようです。しかし、飲む場合、酢だけを水で薄めて飲むより、ビタミンCの豊富な果汁や野菜のジュースを新たに加えるのがお勧め。ジュースのように飲みやすいだけではなく、ビタミンCの酸化を酢が抑え、吸収しやすくするのです。
 そのほかにも酢には様々な栄養効果があります。たとえば酸味を加えることで胃液の分泌を活発にし、食べ物の消化吸収をよくすることができます。また酸味は料理の味全体にインパクトを加えますので、その分塩分を少なくすることができます。つまり間接的ではありますが、減塩効果も期待できるのです。
 酸味は料理における「かくし味」としても有効。味に深みが足りないと感じるとき、ほんの少量の酢を加えると味が引き締まることが多いのです。これは料理のおいしさに関係するPH(ぺーハー)と関係しています。PHを酢によって少し下げることで、人間が「美味しいと感じるほのかな酸味」に近づけるのです。
 このほか、酢にはしょうがの甘酢漬けのような発色作用、殺菌作用、ゼリー化を促進する作用もあります。酢は料理の「頼れる裏方さん」でもあるのです。
世界中でその国を代表する作物が酢になる理由
 酢の栄養効果をまとめてみましょう。
(1)酢に含まれる酢酸と有機酸は体内でほとんどクエン酸に変化し、強力に疲労物質を取り除くので疲労回復に効果がある
(2)血行を良くして代謝を活発にする
(3)カルシウムやビタミンCの消化吸収を助ける
(4)胃液の分泌を活発にして消化吸収を助ける
(5)殺菌、防腐効果で食中毒を防ぐ
 酢のパワー、おわかりいただけますでしょうか。とりわけ天然醸造酢といわれる混ぜ物のない酢は、アミノ酸がバランスよく含まれ、それが有機的に作用してエネルギー代謝を作動させ、疲れにくく太りにくい体質にするという研究発表もあるくらいです。
 天然醸造酢の代表的なものにはイタリア、モデナ地方のバルサミコ酢があります。これは赤ワインになる葡萄のビネガーを木の樽で熟成させたもの。伝統的な手法のものは10年物とか30年物が高い値段で売られています。私が実際にモデナを訪れたとき、昔はバルサミコ酢を薬代わりに飲んでいたという話も聞きました。またスリランカでは、ココナッツを使った天然醸造酢も作られていました。日本で最もポピュラーなのは米酢です。昔から、人々はその土地で最も大切にしている穀物から酢を作ったのだということに感慨を覚えました。
 科学的な分析がなされていない時代から、人々は酢のありがたさを味わい、よく理解していたのでしょう。様々な酢をどうぞ適材適所で、食卓にもっと登場させてくださいね。

酢を使ったレシピ
●奉行EXPRESS 2008年冬号より [→目次へ戻る]
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