客先での打ち合わせや出張だけでなく、オフィス内での省スペース型として使われるモバイルPC。最新のモデルはディスプレイも大型化・高解像度化。さらに厳しくなるコンプライアンスに対応した機能を搭載しています。また、サードパーティー製(※1)セキュリティソリューションなどとの組み合わせで万全の情報漏えい対策が可能です。業務に応じて最適なモバイルPCを選び、営業力とセキュリティ強化による企業力向上を目指しましょう。
(※1)あるメーカーが開発したハードウェアやOS(純正品)に互換性を持った製品を製造しているメーカーの製品。

「ビジネスとITの距離が近くなった」「ビジネスとITは一体のものになった」と言われる今日、IT投資を積極的に行うことが企業力を高めるために欠かせない条件となりました。
ただ、「何に」「いくら」投資すればよいかは、業種や企業の規模によって一通りではありません。投資額を売り上げや経常利益の何%にするか。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークのそれぞれにどのように割り振るのか。ハードウェアへの投資については、サーバー、パソコン、ストレージ、ネットワーク機器のどこに重点を置くのか。適切な方針を決めるには、入念な調査と慎重な検討をすることが求められます。システムインテグレーターやITベンダーに相談を持ちかけるのも、一つの方法といえます。
そうした中で、あらゆる業種と規模の企業に共通したIT投資案件となるのが、パソコンです。従業員が何万人もいる大企業はもちろんのこと、経理などの基幹業務をサーバーなしで行っている小規模オフィスでも、一人に1台のパソコンを用意するのは当たり前となりました。文書作成や電子メールなどの基本的な事務作業の効率と品質も、パソコンの仕様や能力によって大きく左右されると言われています。
携帯することが前提となっているモバイルPCは、デスクトップパソコンとは異なるポイントに仕様の力点が置かれています。重視されるのは製品サイズ、重量、耐衝撃といった可搬性に直結する部分と、画面サイズや駆動時間といった携帯時における使い勝手に直結する部分です。また、最近では「情報漏えいの防止」という観点からセキュリティ機能を重視したモデルも多く発売されてきています。モバイルPCの最近のトレンドをまとめると以下の通りです。なお、各社メーカーとも一様にこれらのトレンドは押さえていますが、細かい特長やスペックはメーカーや機種によって異なります。使用環境に応じて商品を選ぶことが重要です。
重量 |
軽量化が進展。2kg程度のものが主流に |
製品サイズ |
軽量化に伴い製品サイズも薄型・コンパクト化が進展。凹凸のないフラットなデザインもトレンド |
耐衝撃 |
商品を落とした時の目安となる面加圧だけではなく、手を突いてしまった時の目安である点加圧を配慮する機種が増加 |
画面サイズ |
軽量、コンパクト化が進む一方で画面サイズは大型化 |
セキュリティ機能 |
指紋認証といったハード面の機能の充実に加え、ウイルスソフトのバンドル化が進展するなどソフト面が充実した機種が増加 |
例えば、富士通の「FMV LIFEBOOKS8350」は、大画面でありながら製品サイズや質量にこだわったモデルです。軽さ約1.66kg、薄さ24.3mm(14.1型軽量薄型WXGA液晶、ウェイトセイバー搭載時)の軽量・薄型ボディにもかかわらず、14.1型WXGA液晶という大画面を実現しています。また、単純に画面が大きいというだけではなく、細部までの見やすさにこだわっているのも商品特長のひとつです。つまり、商談や打ち合わせにおいて、プレゼン用データとwebページを同時に2画面表示させても、見やすく快適性を損なうことがありません。持ち運びが簡単なだけでなく、ビジュアルを中心にわかりやすいプレゼンテーションを行うことができるので、客先などで商談やプレゼンが多い営業の方にお勧めしたいモデルだといえます。また、会議室などへの持ち運び用の社内モバイルとしても活躍。省スペースで使用可能、しかも大画面なので簡易ミーティングにもお勧めです。
モバイルPCで使用できるアプリケーションとして挙げられるのが、ビジネスアプリケーションの基本中の基本とも言えるワープロや表計算。プレゼンテーションとしては、Microsoft Officeなどが利用可能です。

メールやホームページなどのインターネット利用については、モバイルPCの方がデスクトップパソコンより高い利便性を享受できると言ってもよいでしょう。インターネットに接続するための手段として、LANによる社内ネットワーク(イントラネット)だけでなく、携帯電話、PHS、公衆無線LANなどを使ってインターネットサービスプロバイダー(ISP)にアクセスする方法も選べるからです。メールサービスはどのISPも提供していますが、あらかじめ適切な設定をしておけば、ISPまたはリモートアクセスサーバー(RAS)(※2)経由で社内のメールサーバーにアクセスしてメールの読み書きをすることもできます。外出先での空き時間を利用し、SFAやグループウェアを使用すれば、日報の作成や各担当者のスケジュール管理が行え、わずかな時間も効率的に使うことができます。
さらに、業務アプリケーションについても、社内メールサーバーと同じやり方で出先からの利用が可能です。具体的には、オフィス内ではLANからイントラネットにログインして直接利用。移動中や移動先では、インターネット経由で社内サーバーにログインして利用することができ、帰宅途中であっても、「商奉行」や「蔵奉行」を使用して商品の在庫管理や受発注、売上集計などをスムーズに行うことが可能です。スピードが求められる現在のビジネスシーンにおいて、モバイルPCや奉行シリーズの活用は他社との競争力を高めることにつながっているといえます。
(※2)遠隔地にあるパソコンからのアクセスを許可する機能です。外出先から電話回線などを使用して自宅のネットワークに接続し、ファイルの共有などを行うことができます。
モバイルPCの能力をフルに発揮させるには、使用目的に応じて製品を選ぶことが大切です。ここでは、使用シーン別に、お勧めのモデルをご紹介いたします。
デスク上で活用する製品選びはスペック重視で選定すればよいのですが、難しいのは客先での打ち合わせや出張に持っていく機種の選定です。製品サイズや重量はもちろん、耐衝撃や駆動時間といった点もしっかりと考えておかなければなりません。商談中にバッテリー切れや故障をしてしまうと、大切な商談の命取りになる場合も少なくありません。
具体的な機種でお勧めなのは、パナソニックの「Let's note」です。同製品は、持ち運びによる様々な衝撃への耐久性に優れています。ボディには軽くて強いマグネシウム合金を採用し、液晶パネルを保護しています。落下による衝撃にも強く、大切なハードディスクを守りデータの破損を防ぎます。また、防水キーボードを採用しているので、外出時の破損リスクも回避することができます。さらに、出張時に重要になるバッテリーの駆動時間も長時間化を実現。高密度バッテリーを使用し、最大約10時間まで使用することが可能です。「Let's note」シリーズには選べる4タイプを用意しているので、自社に合った製品を選択することができます。なお、同シリーズは日経パソコン誌上(2007年8月27日発行号)において、「2007年パソコン満足度ランキング」で総合1位を獲得。さらに、ヤフーバリューインサイト株式会社が行ったノートPCに関す調査で「出張御用達ノートPC」で1位を獲得するなど、ユーザーの人気も高い商品です。

モバイルPCは社外に持ち出されることが多く、導入にあたってはセキュリティ対策、とりわけ情報漏えいの備えが求められます。一般的な不正アクセス対策に加えて、紛失や盗難に遭った場合もメモリーや内蔵ハードディスクから重要データ、機密情報、個人情報などが漏れ出さないようにする対策を施しておかなければなりません。なお、個人情報保護法には両罰規定があるので、この対策を怠っていると、企業が処罰の対象となってしまう可能性があります。
モバイルPC向けのおもな情報漏えい対策としては、暗号化とアクセス制御があります。
暗号化は、ハードディスクやUSBメモリーなどに記録されているデータを暗号化しておくことによって、万が一データが不法に読み出されたとしても内容を判読できなくしてしまう対策です。アクセス制御に関する機能は、不正ログインの排除、フォルダーやファイルに対するアクセス権設定、ユーザーの権限やロール(役割)に基づく操作制限などがあります。不正ログイン対策として特に有効なのは、モバイルPCならではのハードウェア方式ユーザー認証機能です。メーカーや機種にもよりますが、指紋認証やICカード認証(Felica/スマートカード)などの高度な認証機能が利用できます。なお、以上の暗号化/アクセス制御機能を提供するソリューション/製品には、TPM(Trusted Platform Module)(※3)仕様準拠のセキュリティチップが装備されたパソコンでの使用を前提としているものがたくさんあります。この仕様に準拠したチップには暗号鍵を生成してチップ内の不揮発性メモリーに書き込む機能とBIOS(パソコンのもっとも基本的な制御ソフトウェア)が改ざんされたことを検出する機能が備わっているため、従来のパソコンに比べてはるかに高いセキュリティ強度が得られるのが特長です。「企業向け」と銘打たれた最新モバイルPCのほとんどはTPM準拠のセキュリティチップを搭載していますから、それを利用するためだけでも買い替える価値はあると言えます。
また、ハードウェア単体のセキュリティだけではなく「PCの操作管理」や「セキュリティソフトの検疫」といった、総合的な情報漏えい対策ができるシステム商品の注目度も高まってきています。当然のことながら、ハードとシステムを一緒に使用することはセキュリティ強度を高めることにつながります。セキュリティシステムの重要度は、今後増していくことは確実で、既にハードとセットで提案をするメーカーも登場してきています。
(※3)TCG(Trusted Computing Group)で定義されたセキュリティの仕様に準拠したセキュリティチップで、マザーボードに実装されています。メールやファイルを暗号化しデータを保護します。
例えば家電メーカーでは東芝です。東芝は企業向けのフラグシップモデルとして「dynabook」を発売しています。同モデルはセキュリティ機能も厚く、「未使用時」から「廃棄時」まで使用シーンに沿った様々なセキュリティ機能が搭載されています。日経コンピュータ(2007年8月20日発行号)の第12回顧客満足度調査「クライアント・パソコン部門」において、顧客満足度NO.1をV2で獲得するなど、品質の高さは間違いの無いところです。そんな東芝が、今、ハードウェアと一緒に提案しているのが中小企業向けのセキュリティシステム「PC運用上手」です。同製品は高度なIT専門知識がないユーザーでも操作がわかりやすく、簡単に情報漏えい対策を実現できる製品として注目を集めています。IT機器の登録、変更、持ち出し、返却処理をウェブ上の申請や承認機能で実現することで、資産管理も効率的に行えることも人気が高い要因です。
ここまでハードからシステムまで最新のセキュリティ機能をご説明しましたが、実は、こうしたハードウェアのセキュリティ以外にも、ちょっとしたことで情報漏えい対策をすることが可能です。例えば、モバイルPCをオフィスで使用する際に、鍵付きのワイヤーをつけたり、外出先では覗き見を防止する液晶画面保護シートなどを貼るといった方法です。
このようにセキュリティ製品ひとつをとっても、様々な製品が発売されています。自社の業務や営業スタイルに合ったモバイルPCを選ぶことは、企業力・営業力アップの必須条件です。ぜひ、今回取り上げたモバイルPC選びの“見きわめ方”を参考にご活用ください。
(取材・文:山口 学)
モバイルPCは、未使用時から廃棄時におけるまで様々なセキュリティ対策が必要です。自社のセキュリティをチェックしましょう。