「元気!」組ビジネスリポート
■専門家集団とのネットワークを活用し企業の適正な環境ビジネスを支援
2008年は温室効果ガスの削減目標の対象期間の始まりの年に当たり洞爺湖サミットも開催され、人々の地球環境に対する意識は格段に高まり、企業にもその対応が求められています。そして今、環境ビジネスの分野には、大きなビジネスチャンスが存在すると言えます。大企業が先陣を切る中、中小企業はこのチャンスをどのように活かせばよいのでしょうか。
今回は、環境をビジネスとしていち早く取り入れた株式会社環境ビジネスエージェンシー(本社・東京都千代田区)から環境ビジネスのヒントを探ります。

■株式会社環境ビジネスエージェンシー
東京都千代田区神田錦町1-14 ウキガイビル7階 TEL 03-3296-8655
代表取締役社長…鈴木敦子 社員数…7名 URL:http://www.ebagency.jp/
「企業の“環境ビジネス”の代理人」として、適正なる「環境の事業化」の実現を目指して環境市場に参入する企業に対し、アドバイザリーサービスやエキスパートのマッチングといったビジネス支援を行う。
「お中元を買って地球温暖化防止」。百貨店の環境マーケティングを支援

 京急百貨店(本社・神奈川県横浜市)は今夏、お中元の販売において百貨店業界では初となる、地球温暖化防止に役立つエコプロジェクトを実施し話題を集めました。このプロジェクトはビールおよび食用油のお中元ギフトに、営業活動や配送時に発生するCO2排出分を相殺するだけの植林やグリーン電力の購入を行ういわゆる「カーボン・オフセット」の仕組みをセットするというもの。営業、配送時に商品1つあたり約1kgのCO2が発生すると計算し、5,000個程度の販売を見込んだ約5t分のCO2を削減できる120本分の植林およびグリーン電力費用を同社が負担。ギフトにはこの仕組みの説明書も同梱し、贈る側も贈られる側も地球環境に貢献しているという付加価値を感じてもらうという狙いが込められています。このお中元は今までにないギフトとして話題を呼びました。
 このプロジェクトを支援したのが株式会社環境ビジネスエージェンシー(以下EBA)。長年にわたって企業の環境活動を支援しています。EBA代表取締役の鈴木敦子氏は現在企業が抱える問題についてこのように述べます。
 「環境に対する取り組みが急速に求められる今、〈環境経営を打ち出したいが、何をすればいいかわからない〉〈新規事業として環境ビジネスに進出することは決まったが、具体的なアイデアがない〉と手をこまねいている企業や担当者は少なくありません。そこで、私たちは環境ビジネスを模索する企業をターゲットとしたビジネスに目をつけたのです」。

1万1,000人の環境分野の専門技術者集団とネットワーク

イメージ  これまでEBAは数々の企業に対し環境ビジネス推進支援や環境事業の調査・研究・教育、環境事業の委託および代行などを手がけてきました。最近では、M&Aコンサルティング企業から買収案件となっている環境系企業の発明資産に対する評価を支援するといった仕事も受託しています。
 EBAの最大の強みは、地球温暖化対策ビジネスや廃棄物・リサイクル、環境コミュニケーション、資源・エネルギーなどといった、環境ビジネスを取り巻くさまざまな分野の専門家集団とネットワークを構築していること。受注案件ごとに最適な知見やスキルを持つメンバーをアサインし、プロジェクトを組成することができます。特に、1万1,000人もの専門技術者コミュニティとの緊密なネットワークは「エキスパートナー」というユニークなサービスに結実しています。このような人的資源はEBAの特徴の一つです。
 「環境ビジネスに活用されるべき知恵は数多く眠っています。一方、新技術開発や新規事業への進出、要素技術の用途開発など環境ビジネスに関する可能性を感じていても、社内にピンポイントの専門家がおらずに結局事業化の芽が“お蔵入り”してしまう企業が数多く存在しています。ならば、双方のニーズや専門性を理解できる当社が、その中から最適な専門家を探してマッチングすればビジネスになると踏んだのです(鈴木氏)」。

「市民の環境活動の代理人」たるNPOを“車の一方の輪”として事業推進

 「企業の“環境ビジネス”の代理人」であるEBAに対し、NPO環境リレーションズ研究所(以下、Er)は「市民の“エコ・アクション”の代理人」という位置づけとし、1999年に鈴木社長が個人事業として創業後、2003年にErおよび株式会社(現EBA)を設立し、両社に業務を振り分けました。
 「企業にいくら環境ビジネスの導入を提案しても、生活者の環境意識が盛り上がっていなければ無意味。EBAとErは車の両輪なのです(鈴木氏)」。Erの主要な事業は「Present Tree(プレゼント・ツリー)」というエコアクションプログラムの運営。このプログラムは、植林およびその樹木の成長の楽しみを人にプレゼントすることを通じて、生活者が気軽に環境活動に参加できるという特長があります。
 「自分で直接植林などをするのは大変だし面倒。そういう多くの人に代わって、Erが植林・保育を行う仕組みです。このようなサービスは多くの企業が関心を持っています。その関心を引くことも私たちのビジネスの一つといえます(鈴木氏)」。

環境関連法の条文を使いやすくしたプログラムを開発

 現在、Present Treeのプログラムは京急百貨店の「楽ecoお中元ギフト」やJCBカードのポイント交換商品としてラインナップされるなど、多くの企業のエコを打ち出す販促ツールなどとして活用されています。
 「EBAは、企業にB2Cの環境コミュニケーションを提案する際、コンテンツのリソースとしてPresent Treeを活用できる一方、Erの使命は生活者の環境意識を顕著化させるこうしたプログラムを開発していくことです。次々に打ち出していくことで、企業を飽きさせないようにすることが重要だと思っています。類似のプログラムを手がける企業や団体が参入していきていますが、大歓迎です。市場が耕され、EBAのビジネスチャンスも増えるからです(鈴木氏)」。
 Erはこのほかに、リーガルスタッフを抱える余裕のない中堅・中小企業に自社の環境設備が法的にどういう位置づけにされているのかといったことが簡単にわかる「環境法令サポート」というPC用のプログラムを開発しました。現行の環境関連の法令の条文が一般人には非常にわかりにくい体系となっており、中堅・中小企業の「善意の違反者」が数多く存在する現状を問題視して開発したと言います。

ライフワークは、環境に関わる人と人とのコミュニケーション

 EBAが活躍している背景には、ここ数年、生活者の環境意識の高まりと、その一方で多くの企業が環境経営を持て余している実状があると言います。
 「今や環境を考慮していることが生活者から選ばれるブランドの条件となりつつある一方、どの製品やサービスの品質も一定のレベルとなって差別化が図れないという現実があります。そこをどう突破すればいいか、悩んでいる企業が非常に多いのです(鈴木氏)」。
 CSR部や環境推進室といったセクションを創部しても、形ばかりの単なるコストセンターで力を発揮できる素地を伴わせていない場合が大半。EBAはこの実状を踏まえ、まずは全社員の環境意識を発揚するインターナルマーケティングを提案し、階層別教育などを手がけたのです。そうして築いてきた風土の中で、例えば販売現場から「エコな商品を開発しよう」という発想が生まれるようになったのです。
イメージ  もともと鈴木氏は、公害問題に深い関心を持つ母親の影響を受け、学生時代から環境の研究に取り組んできました。環境コンサルティング会社で働きながら、環境法令の存在で“食い扶持”に困らず新しい取り組みにチャレンジしない保守的な業界体質に見切りをつけて独立を決意。
 「企業に眠っている環境関連技術を評価し、特許申請を代行するなどして事業化を手伝うというビジネスを実現させたかったのですが、創業当時は環境ビジネスで収益を上げましょうと提案しても、できるわけがないと笑われる時代でした。ならばと、現在の当社のサービスのように企業に取り組んでもらいやすいパッケージを開発してきたのです(鈴木氏)」。
 EBAは、環境ビジネスの黎明期から活動を始めたことで、あらゆる情報を蓄積。専門家とのネットワークを構築してサービス品質を高める一方、生活者の環境意識を高めて市場を活性化し、自社のビジネスチャンスに対する施策を実行してきました。時代背景とターゲットの需要にいち早く目をつけ、多彩な人脈をビジネスに生かした戦略は、これから環境事業を展開する中小企業にとって大いに参考になると言えるのではないでしょうか。

◇鈴木氏が参加する「環境ビジネスウィメン」が主催する「eco japan cup」では、環境をテーマにしたさまざまなコンテストを行っています。
http://www.eco-japan-cup.com/
※2008年度の募集は終了いたしました。

●奉行EXPRESS 2008年秋号より [→目次へ戻る]
SSI ファイルの処理中にエラーが発生しました