著者:喜多川泰
出版社:ディスカバー・トゥエンティワン
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会社を経営し、好きだった絵で個展を開き、可愛い娘が自分の絵を見つめてくれる…人生の成功を手にした「ぼく」は、その成功へと導いてくれた一人の少女のことを思い出す。ハルカ。17歳の夏に出会った少女は、人生における「大切なこと」をすべて教えてくれて、一瞬にして消えていった…。
純愛小説の展開の中に「どう生きるのか」という自己啓発のテーマが投げかけられる今までにない構成。「自分の欲しいものを知る」「夢を実現させる方法を知る」「魅力溢れる人になる」「手段を目的にするな」「できないという先入観を捨てる」など、人生を成功へと導くための6テーマが「ハルカ」からのメッセージとして「ぼく」に伝えられます。
一見『世界の中心で愛をさけぶ』のような小説かと見まがいますが、読んでいくうちに違和感なく生き方指南が伝わってくるのが不思議です。すでに夢から遠ざかっている大人が読んでも、10代の頃の素直な情熱が呼び覚まされるかもしれません。それくらい、主人公の「ぼく」と「ハルカ」は読者が自己投影しやすい透明度をもっているといえるでしょう。
著者は大学卒業後、塾を経営。高校生を中心に英語を教えながら自己啓発の研究を続けており、「一人でも多くの若者に素晴らしい人生を送ってもらうために」と執筆活動を始めたのだそう。実際に若者と日々向き合う純粋さが、作品に表われています。
昨今の純愛小説にはあまりにも「死」が安易に登場して、ドラマ性を盛り上げることに使われますが、この小説に関しては「生」を真摯に考えるためのモチーフとして生きています。人生の後輩にもぜひすすめたい一冊です。
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