頭のスパイス 心のビタミン BOOKS
以前、ある人の著作の中で、新聞や雑誌などは自分でお金を払って読むからこそ価値が出る、という内容の文章を読みました。曰く、電車に置き去りにされたり、拾った新聞や雑誌を読んでも、ほんとうに自分のためにはならないだろう、と。妙に納得してしまったのを覚えています。インターネットの発達で、情報も文化も無償で手に入ることが多くなった今こそ、その言葉を噛み締めています。
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自分の「キャリア」を磨く…実践の一冊。
仕事のための12の基礎力

著者:大久保幸夫
出版社:日経BP社
 みなさんは、仕事における「キャリア」や「能力」という言葉をどう捉えていますか? これらは決して、学歴や肩書き、資格の有無だけで表されるものではありません。
本書ではまず、キャリアに関するさまざまな誤解を挙げています。その上で、キャリアを成功に導くために著者が考える基礎的な能力を「12の基礎力」として定義し、その欠如によるデメリットと取り組むべき年齢(“旬”となる適齢期)とを明らかにしました。
これら12の基礎力は、対人、対自己、対課題の3種類に分けられますが、いずれも本質的に「いい仕事を楽しくやる」ための能力だとされています。成功のためには「目標を持つ」ことや「信念を持ってやり遂げる」ことが重要と言われがちですが、「あらかじめ自分のキャリアを計画して思い通りに歩んでいくことは現実的ではなく、もっとプロセスの中で獲得していくものではないか」という著者の意見は印象的です。そのプロセスを支える12の基礎力は、ほかならぬ自分自身のキャリアを満足させるための実践を必要としています。
就職を控えた学生であれ、セカンドキャリアを模索する中高年であれ、自分の能力を計画的に開発することの重要性を訴えています。心や精神の“成熟度”の大切さをあらためて実感する一冊です。
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父と子の断絶と交流を知る…再生の一冊。
流星ワゴン

著者:重松 清
出版社:講談社文庫
 本書の主人公は38歳のサラリーマン。妻と中学生のひとり息子と郊外のマンションに暮らしています。どこにでもありそうな核家族の家庭で、やはりどこにでもありそうな現代的な病を抱えた家族です。すなわち、失業、不登校、家庭内暴力、浮気……。
壊れた家庭に絶望した主人公はある日、最終電車の終わった駅のロータリーで、とある父子の乗ったワゴン車に誘われます。そこから始まる「たいせつな場所」へのタイムスリップ。主人公は、今の後悔をやり直すために、分岐点となった過去のある場所へ連れて行かれるのです。
かつては気付くことのできなかった妻や息子の異変を知り、現実を変えるために主人公は行動します。そして、故郷の病院で死の床に臥せっているはずの父(それも、主人公と同じ38歳の頃の)と出会います。
父と子の関係をテーマに、重層的に進行するストーリーですが、3組の親子がそれぞれ巧みに描き分けられ、共感を持って読み進めることができます。
ファンタジーの要素が強くありますが、テーマに据えられた父と子の断絶と交流は普遍的でリアルなもの。物語自体は、決してハッピーエンドとは言えません。たとえ過去や現実を変えることができなくても、未来を変えていくことはできる、そんなささやかな希望に満ちた、爽やかな読後感が残る一冊です。
ベストセラー トーハン2006年6月1日調べ
    ■文芸
  • 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン[リリー・フランキー/扶桑社]
  • 容疑者Xの献身[東野圭吾/文藝春秋]
  • 陰日向に咲く[劇団ひとり/幻冬舎]
  • 翼の折れた天使たち(空・海)[Yoshi/双葉社]
  • ウルトラ・ダラー[手嶋龍一/新潮社]
    ■単行本・ビジネス
  • 細野真宏の世界一わかりやすい株の本 実践編[細野真宏/文藝春秋]
  • 千円札は拾うな。[安田佳生/サンマーク出版]
  • 一番売れてる株の雑誌ZAiが作った「株」入門[ダイヤモンド・ザイ編集部 編/ダイヤモンド社]
  • たった7日で株とチャートの達人になる![ダイヤモンド・ザイ編集部 編/ダイヤモンド社]
  • 細野真宏の世界一わかりやすい株の本[細野真宏/文藝春秋]
●奉行EXPRESS 2006年夏号より
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