大手通信各社が撤退したPHSサービスを再生し、さらに発展させている株式会社ウィルコム。新機種発売時には長蛇の列を出現させるほど、市場にインパクトを与えています。今回は、そのウィルコム躍進の背景を通じて見えてくる「ビジネスに対する革新性」を探ります。
さらに、小電力の恩恵は、PHS無線部分の超小型モジュール化も実現させました。「WILLCOM SIM(W-SIM)」と呼ばれる無線モジュールは、その重量わずか8g。これを標準インタフェースとすることで端末開発を容易にし、ユーザーのニーズに幅広く応えることができます。
たとえば、ビジネスの現場では音声&データ通信共用端末である「W-ZERO3」を使い、オフの日にはさらにシンプル機能で軽量な音声端末「nico.」に差し換えて使う、というように、状況に応じたフレキシブルな使用方法も可能です。
モジュール化により電話機の選択肢が広がるだけではありません。携帯電話事業者のビジネスモデルが垂直統合型(クレジット機能、ワンセグ機能、音楽再生機能などが各社独自仕様での展開のため、パートナー企業の制限が多い)であるのに対し、ウィルコムのそれはオープン型を指向しています。つまり、パートナー企業としては端末の無線技術を「WILLCOM
SIM(W-SIM)」に委ねることで、小ロットでの製品づくりが可能になり、オリジナリティを持ったサービスを創造することができます。具体例としては、バンダイが子ども向けに開発した「キッズケータイpapipo!TM」※などが挙げられます。その他、法人向けソリューションのビジネス例も増えており、各業界に横断的な、各企業の得意分野と連携することで、次々に新しいビジネスチャンスを獲得していく道筋が見えているようです。
今後ウィルコムでは、固定やモバイルを問わないWEB環境の統一・使いやすさ・低コストを実現できる環境を一体的に提供していき、将来の通信業界において独自のポジショニングを担う意向があるそうです。
単に「低価格サービスを実施している通信機器」という枠にとどまらず、情報通信の世界に新風を起こす存在として、今後の展開に期待が膨らんでいます。
たとえウィルコムがどんなに優れた技術を持っていても、その活用に対して、フレキシブルな視点や姿勢を持てず、従来の方法でしか対応できない状況では、苦境を打破することは難しかったでしょう。しかし、ウィルコムは決して当時の現状に留まることなく、成熟した通信業界の中でいかにして「独自性のある優れた技術」を消費者にアピールし、定着させ、拡大していくかを考えました。その結果、「“自社の強み”をよく理解した上で、他社とは違った角度からアプローチし、展開していくこと」により、業界内において確固たるウィルコムブランドを確立し、ひいては業界全体の活性化にも貢献したといえます。
ビジネスにおける「革新」には、それまでの考え方や方法・手法に対して別の角度から見直すことが重要であり、時には「勇気を持った決断」も必要となってくるのではないでしょうか。
※PHSサービスは、携帯電話のナンバーポータビリティサービスは適用されません。電話番号は「070-****-****」となります。