頭のスパイス 心のビタミン BOOKS
「秋」は一年のうちでも最も過ごしやすい季節として、春と並ぶ生物の活動が盛んな時期だそうです。みなさんは、「秋」と聞いて一番に何を連想されますか?「食欲の秋」?「スポーツの秋」? それとも「読書の秋」? 今回は、「読書にぴったりの季節 = 秋」ということで、いつもの2倍の拡大版! まずは、各方面で多彩な活躍を見せる「勘定奉行」のCMディレクター、石川鐡男氏の俳句エッセイからご紹介します。
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離婚後の男やもめの日常を俳句エッセイで描く…軽妙の1冊。
ぼくの細い道 俳句日記 カミさんに逃げられた男の台所

著者:石川鐡男
出版社:ロコモーションパブリッシング
 「勘定奉行」のCMディレクター、石川鐡男(てつお)の 軽妙洒脱な俳句エッセイ。読み始めれば止まらず、ついつい最後まで一気に読んでしまうおススメの一冊です。
 帯文は長い間、氏のCMに出演していた立川志の輔。「人生の危機を、この角度で自らを笑うのか。彼ほど落語的な人を私は知らない」。
 56歳の時に二度目の離婚、59歳で「がん」を発病。普通ならへこんでしまうところですが、このCMディレクターはこうした状況を一冊の本にしようと企てます。山形は酒田での生い立ちや独り暮らしの料理レシピ、バイクや釣りに熱中した日々、そして、55歳から始めた俳句。
「久方に 空を飛ぶ 夢初氷」
「三日月に 帽子を掛けて 野宿かな」
「居酒屋を 出でて三歩の 夜寒かな」
 読者をぐいぐい引っ張る軽妙な文章に、即かず離れずの俳句の挿入。映像の編集テクニックを思わせる有りそうで無かった文章構成は、映像作家の面目躍如といったところ。
 CMディレクターという映像作家でありながらエッセイスト、そして、俳句結社「百鳥」の俳句同人、故郷庄内の新聞での俳句エッセイ「俳句便」連載、また、落語のオリジナル台本や番組「昭和大百科」を手がけるなど、何時でも、何かを考え続けている「石川鐡男」からこれからも目が離せません。
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生きることへの希望を見出す…珠玉の一冊。
風に舞いあがるビニールシート

著者:森 絵都
出版社:文藝春秋
 本書は第135回直木賞を受賞した短編集で、表題作を含む6つの短編が収録されています。
 各編の主人公は、性別も年齢もさまざま。学生、主婦、営業マンなど社会的な立場も異なりますが、1冊を通して読むと、ひとつの共通点があることに気づきます。それは世の中の価値観と自分の価値観のずれを自覚しながらも、折り合いをつけて前向きに生きていこうという姿勢です。
 ある短編の登場人物は「十年のうちでたった一日、みんなと草野球ができないような人生はごめんだよな」と言いながらも、現実はそう思い通りにならないことを十分に理解しています。ただ、現実は現実として受け入れるけれども、そんな夢みたいなことを考えている自分は大事にしたい。そんな登場人物たちが何とかバランスをとって進んでいこうとする姿を、著者はあたたかい視線から描いています。
 そして、そんな懸命に生きている登場人物たちに、著者は最後にはちゃんとプレゼントを用意しています。それで現実が変わるわけではない、でも頑張っていてよかったと思えるようなすてきなご褒美です。
 現実のなかで生きていくのは大変だけど、決して悪いものではない−−。そんなあたたかい読後感の残る1冊です。
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数字ではなく人間を対象にした経済学…開眼の一冊。
行動経済学 経済は「感情」で動いている

著者:友野典男
出版社:光文社
 標準的な経済学が前提としている「経済人」はどのような人なのか、考えたことがありますか? 簡単に言えば、常にどうすれば一番自分が得をするかを考え、合理的な判断のみを行う存在、それが経済学でいう「経済人」です。そして経済活動を行うすべての人がそのような考えのもとに行動するという前提で考えられているのが標準的経済学だとすると、「それは本当に現実的なのか?」という疑問が沸くのではないでしょうか。
 実際に経済活動を行うのは、「経済人」のような特別な存在ではなく、非合理的な活動も普通に行う、生身の人間です。その生身の人間の感情や直感といった心のはたらきを重視し、現実に即した「経済学」を構築していこうという学問が「行動経済学」であり、本書はその行動経済学とはどういうものかについて、多くの理論を紹介しながら分かりやすく解説しています。
 人間の非合理的な面を具体的な例を挙げながら、「プロスペクト理論」や「フレーミング効果」といったさまざまなキーワードを軸に解き明かしていく…。その過程は「経済学」という分野にとどまらず、人間という生き物の不思議さ、面白さが理論的に解説され、興味深さに満ちています。
 新しい学問がこれからどう確立されていくのかが楽しみになる一冊です。
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自分のスキルを有効に使うために…実行の一冊。
使う力 知識とスキルを結果につなげる

著者:御立尚資
出版社:PHP研究所
 ビジネスで必要な知識やスキルを身につけるためには、自分で専門書を読んで勉強したり、ビジネススクールで学んだりすることが必要です。実際にそのようにして学んでいる方も少なくないでしょう。しかし、そのようにして習得した知識やスキルも、有効に使うことができなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
 本書はその「有効に使う」ということに焦点を当てた、「使う力」を習得するための指南書となっています。「使う力」を身につけるためには、まず「使う力とはなにか」を理解しなければなりません。
 著者は「使う力」を、自分の役割に即した目標と重なること、習得方法が明らかなこと、普段の仕事のなかで応用しつつ、さらに伸ばしていけること、という3つの条件から定義づけています。そしてそれらの条件を満たす「使う力」を、日常の業務のなかでどのように向上させていけばよいのかという具体的な方法を紹介しています。それを、明日からでも自分の仕事のなかで実践できるところが本書の魅力でもあります。
 仕事のなかで得た「使う力」は人生のいろいろな場面で活用できるはずだと著者は言います。自分の持っている能力を有効に活用するための手段である「使う力」が、自分の新しい可能性を開いてくれるかもしれません。
ベストセラー トーハン2006年10月3日調べ
    ■単行本・文芸
  • 狼花 新宿鮫 IX[大沢在昌/光文社]
  • 名もなき毒[宮部みゆき/幻冬舎]
  • 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン[リリー・フランキー/扶桑社]
  • 中原の虹(1)[浅田次郎/講談社]
  • 陰日向に咲く[劇団ひとり/幻冬舎]
    ■単行本・ビジネス
  • 鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール[野口嘉則/総合法令出版]
  • なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?[小堺桂悦郎/フォレスト出版]
  • 3週間続ければ一生が変わる −あなたを変える101の英知[ロビン・シャーマ、北澤和彦 訳/海竜社]
  • 「そうじ力」であなたが輝く![舛田光洋/総合法令出版]
  • 夢をかなえる勉強法[伊藤 真/サンマーク出版]
●奉行EXPRESS 2006年秋号より
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